2015年9月 Y様の手記 



「エンジンルームの子猫に出会って」

月曜日の夜でした。
時折見かける野良猫が、子猫を3匹連れ、家の周りをウロウロするようになりました。

火曜日、ガレージの辺りで親子連れを見つけ近づいていくと、
一匹だけ車の下に逃げ遅れてしまいました。
タイヤの影に隠れながら、車体に向かって背伸びしているのが気になりましたが、
そのうち逃げるだろうと、その場を離れました。

水曜日、昨日から車の下に入った子猫だけ姿が見えず、母猫が車の近くで鳴いています。

木曜日、やはり気になり、ディーラーのトヨタに行って聞いてみました。
すると、猫はエンジンルームに入るんですよ、子猫を生むこともあります、とのこと。
その場でボンネットを開けてもらうと、チョコンと子猫が一匹座っていました。
驚いた子猫は奥へ逃げ、よく調べてもらいましたが、
底から逃げてしまったのでしょうということで帰宅しました。
母猫から離れてしまった子猫は助からないだろうと、
自宅のガレージで確認してみなかったことを後悔しました。

金曜日、残りの二匹の子猫を連れた母猫が、また車の方へ歩いていきました。もしや…、
時間をおいてボンネットを開けてみると、やはり子猫が二匹入っていました。
驚いた子猫は頭を隠し、お尻をむけたまま、固まっています。



尻尾をひっぱってみようか、悩みましたが勇気が出ず、そのままボンネットを閉めました。

どうしよう??

しばらく悩みましたが、以前からお知り合いが、
八幡で地域猫の活動をされていることをブログなどで拝見していましたので、
思い切って相談しました。
本当は、子猫を見たときから、その方のことが頭に浮かんでいたのですが、
猫たちと関わり合いにならずに済むのならと思っていたのです。

お返事はすぐにいただけました。

子猫は何回もエンジンルームに入り込み、車から落ちて交通事故に遭うことが多いこと、
小さいうちなら里親募集して家猫として幸せになれること、
母猫は不妊手術をして元の場所に放すことを教えていただきました。

今日なら動けます、と力強いお言葉通り、「八幡地域猫を考える会」の3人の方が
駆けつけてくださいました。
あんなにすばしっこい野良猫たちが捕まるのかと不安でしたが、
会の方々は、鳴き声から猫たちの居場所をみつけ、
おうちの方の了解を得て、捕獲箱を設置しました。

数分でキジトラの子猫が捕まり保護すると、また新しい捕獲箱を設置し、
ゲージの準備のため一度戻って行かれました。それから一時間待たず、茶トラの子猫が入り、
電話で連絡すると、次は母猫を捕獲します、とのことです。
指示通り、箱を置き、ほどなく母猫も捕獲することができました。
的確な方法に、会の方の知識と経験の豊富さを実感しました。

母猫は手術のため病院へ、

子猫はゲージ一式をお借りし、我が家で世話をしながら、里親探しをすることになりました。



さっきまで野良猫だった子猫たちが、教えなくてもトイレを使うことに驚き、
抱っこをして子猫たちの可愛らしさに笑みがこぼれました。

土曜日、手術済みの印の耳カットをした母猫が戻ってきました。



元の場所に放す決まりのためガレージ前で放しました。
元気に走っていきましたが、数時間しない内に子猫を探して、家の前で鳴きながら離れなくなりました。
子猫たちも声を聞きつけて落ち着かず、夕方には少し留守にした隙に、
玄関の内と外で大きな声で鳴きあってしまいました。
どうにもできず会の方に連絡し、子猫たちを預かっていただきました。
母猫は、その後もじっと家を見つめ鳴いていましたが、
子猫がいないのはわかるようで、落ち着いてきました。

今回、私の中で一番心を痛めたのは、母子を引き離してしまったということです。
しかし、子猫たちは、このまま車に出入りしていては、事故に遭う可能性も高く、
野良猫が増えることは、住宅街にも好ましくないことが多々あります。
「地域猫活動」とは、飼い主のいない猫の問題を動物愛護の観点からでなく、
地域の環境問題としてとらえる、という会の主旨に納得し、
今回の行動が、間違っていないのだと思えました。

さいわい、里親さんはすぐに見つかり、子猫たちはそれぞれの家で可愛がってもらえるでしょう。

トヨタで逃げた子猫も、ショールームの車のエンジンルームで鳴いているところを保護され、
スタッフの方々に面倒をみてもらっていましたが、里親さんに迎え入れてもらえました。



母猫は、今日もご近所をウロウロしていますが、
不妊手術が済んでいるので、温かく見守る余裕ができました。
最後になりましたが、今回のことは一人ではどうしようもなく、
「八幡地域猫を考える会」の皆様には捕獲から子猫のケアまで大変お世話になり、
深く感謝しています。                         
                        2015年9月18日